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「地面師って何?」
「地面師を見破る方法はある?」
「地面師」という言葉を聞くと、2017年に報じられた大手ハウスメーカーが地面師グループに巨額のお金を騙し取られた事件を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
地面師とは、不動産購入代金を騙し取られてしまう詐欺被害で、一般消費者から大企業すらも騙されてしまう恐ろしい手口として知られています。
そこでこの記事では、
- 地面師の手口とは
- 地面師による詐欺事件
- 地面師による詐欺を防ぐ対策
- 地面師に騙し取られたお金の返金方法
これらについて、解説していきます。
地面師の手口とは
地面師とは、不動産の所有者になりすまし、売却すると見せかけて不動産代金を騙し取る詐欺師のことです。
地面師は一般的に複数人の組織になっており、不動産所有者のなりすまし以外にも司法書士や不動産業者などの専門家を装うため、被害者は詐欺だと気づくことが難しい傾向にあります。
近年では、地面師の手口も巧妙化しており、運転免許証やパスポートの偽造、不動産登記謄本の偽造は、本物の司法書士や専門家でも見抜けないほど精巧な作りになっているため、非常に注意が必要です。
地面師は、空き地や更地、空きビルや管理人が常駐していない施設など、本当の所有者と鉢合わせする可能性が低い不動産を狙う傾向が見られています。
また、所有者本人が亡くなっていたり、所有者が入院や施設に入っていたりしている場合も狙われやすいと考えられています。
買主が地面師にお金を支払ったところで、地面師たちは行方をくらませます。
そして、買主は登記申請が却下されてはじめて騙されたことに気づきますが、すでに地面師との連絡はとれず、支払ったお金を取り戻すことも難しくなってしまいます。
地面師は、不動産情報や所有者情報などを徹底的に調べ、詐欺が行いやすい不動産を見極めているため、消費者は取引相手が詐欺師であると見抜きにくいというところが地面師の恐ろしいポイントとなっています。
そこで次項では、実際に発生した地面師による詐欺事件をご紹介します。
地面師による詐欺事件
地面師による大規模な詐欺事件として、大手ハウスメーカーが地面師グループに騙された事例を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、大手企業も騙された地面師による詐欺事件を二つご紹介します。
大手ハウスメーカー地面師詐欺事件
2017年8月、東京都五反田にある約600坪の土地取引を巡り、詐欺事件が発生しました。
事件の舞台となった土地は、不動産業界ではかねて注目の案件でした。
大手ハウスメーカー(以下S社)は、所有者を名乗る女と600坪の敷地を70億円で購入する売買契約を締結後、手付金14億円を支払いました。
売買契約を締結した翌月、実際の所有者から「売買契約はしていない」などといった内容証明郵便がS社宛てに届くも、S社は怪文書と判断し、その時点で十分に検討されなかったといいます。
その後、所有権移転登記を申請したところ、法務局から登記申請が却下された段階で詐欺だと発覚、地面師グループは約55億円を騙し取ったとして、数十人が詐欺容疑などで逮捕、そのうち10人が起訴されたということです。
大手ホテル地面師詐欺事件
2017年11月、大手ホテルチェーンの関連会社(以下A社)との土地取引を巡り、詐欺事件が発生しました。
事件は、東京都港区赤坂にある約120坪の駐車場でした。
所有者はすでに死亡していましたが、地面師グループは土地所有者の兄弟になりすまし、A社との売買契約を成立させました。
しかしその後、法務局から”書類は偽造である”と登記申請が却下され、関係者は地面師グループに騙されたことが判明しました。
被害額は12億6000万円にのぼったということです。
地面師に騙されないための対策とは
ここまで、地面師による手口や実際に発生した詐欺事件の事例をご紹介しましたが、気になるのは「地面師に騙されないための対策」なのではないでしょうか。
実は、地面師による詐欺事件を防ぐことは極めて難しいと考えられます。
免許証やパスポートといった本人確認書類でも、司法書士でも見破ることができないほど精巧に作られていることもあるため、本人以外の第三者でも怪しいと感じることが難しいからです。
そのため、不動産の購入を検討している際は、地面師に狙われやすい土地の特徴を把握することが一番の対策といえるかもしれません。
- 高齢者が所有している一等地
- 登記上の所有者が住んでいない土地
- 空き地や更地
- 空きビルや管理人が常駐していないビル
不動産購入を検討している方は地面師に狙われやすい不動産の特徴を参考に、地面師詐欺の被害に遭わないようくれぐれもご注意ください。
地面師に騙し取られたお金の返金方法は?
地面師に騙し取られてしまったお金は返金できるのでしょうか?
結論からお伝えしますと、地面師に騙し取られたお金の返金請求は困難であるケースが非常に多いです。
なぜなら、警察には「民事不介入の原則」があるため、犯人が逮捕された場合でも、警察では返金交渉などの民事事件に対応できないからです。
警察はあくまで犯人を逮捕することが仕事です。
犯人が詐取したお金を取り戻してくれるわけではありません。
地面師にお金を騙し取られてしまった場合には、不当利得返還請求という民事裁判を起こすことで返金される可能性がありますが、犯人に返済能力がない場合、返金を望むことはできません。
大手ハウスメーカーや大手ホテル企業であっても、地面師によって莫大な金額を騙し取られてしまいましたが、騙し取られたお金を全額取り返すことがほぼ不可能でしょう。
大手ハウスメーカーS社は、土地購入代金55億円を騙し取られた事件をめぐり、逮捕起訴された10人に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は計10億円を支払うよう命じたということですが、こちらも犯人らに返済能力がない場合は全額回収することは困難であると考えられます。
そのため、不動産購入を検討する際は、信頼できる不動産業者と取引することや、怪しいと感じたら購入をやめるといった決断が大切です。
地面師グループによる詐欺被害にはくれぐれもご注意ください。
地面師による詐欺には要注意!
地面師による詐欺被害は、一般消費者のみならず、大企業すらも騙されることもあるほど手口が巧妙です。
そのため、不動産購入を検討している方は、改めて地面師に狙われやすい土地の特徴を把握し、こうした土地の購入をする際はくれぐれもご注意ください。
- 高齢者が所有している一等地
- 登記上の所有者が住んでいない土地
- 空き地や更地
- 空きビルや管理人が常駐していないビル
不動産購入は、人生に何度も経験することではないため、取引に慣れていない方も多いと思います。
地面師は、不動産取引の知識がない一般消費者を狙い、詐欺を働くこともあるため、事前に手口や事例、取引の流れ等を知っておくことがとても大切です。
また、売買取引の際に、少しでも怪しいと感じることが遭った場合は、購入を控えるなどの勇気を持つことも大事でしょう。
この記事を通して、地面師による詐欺の被害を防ぐ一助になれば幸いです。
不動産詐欺の手口や返金方法は、こちらの記事をご参照ください。